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社会からのデザイン、利用者からのデザイン

 スポーツは明快ですが、私たちの社会は複雑で分かりにくい。そこに問題意識を持つことが重要であり、問題があるのなら、既成概念を壊してゆくことも私は大切だといっています。 その最たるものが時間であり、労働時間です。もともと労働に決まりはありませんが、決めたというのが8時間労働。世界的にです。日曜日も日本には無かった。それを決めたわけだから、じゃあもっと進化させれば能力の高い5時間で仕事終わる人はいっぱいいるはずなのに、8時間労働で縛られている。そう言うことを、もう一回国家的にステップアップをしなくちゃいけない。すると今、社会で問題になっている夫婦二人で核家族は、子供生まれた瞬間から預けることを避けられませんが、6時間労働になったら4時間という時間が生まれます。お父さんお母さん2時間ずつ合わせて、その4時間で子供が育てられるんですよ、毎日。このように見ていかなければ、今のような社会状況、構造を変えられない。これがデザインなんです。そのために何をしたら良いのか、軸を動かさないで小手先のデザインで色形を追っかけても駄目で、その軸を変えたら?っていう覚悟です。今回、自民党から民主党へ大きな軸が変わった、これも一つのデザインで、最も大事な事を国民がデザインしたわけです。それで不都合が絶対生まれるというのに、それを受け入れない国民は最低な国民です。こっちが変わったら自分も変わっていくんですから。 それはもう社会も全部変わるんです、みんな変わらなくちゃいけないんです。

ですから、デザインも大きな覚悟の上で変わるのです。デザイナーはいつも企業の側にいるけど企業の側にいてデザインをしているようなデザイナーではもう要らないんだ、お客様の側に立てるデザイナーでなければ企業を守れないんだというのが答えです。JR九州は、私達デザイナーを使うときの条件として、「私はJR九州の側に立ちません、いいですか?私は利用者の代表の立場でデザインを提案しますけどよろしいですか?」ということに了解があって手伝っているのです。それから初代の社長が私達に言ったことは、「必要条件とかスケジュールとか予算とか技術については全部要求します、しかし色形については水戸岡さんに全部任せます、一切社内から文句は言わせません。」とおっしゃったのです。それで僕らは出来た!

デザインは、社会を俯瞰する

実のところ、色形というのを社長は知らなかったのかもしれない。形というのは機能から全て素材まで含めていますから、全てを私達が動かすなんて大変なことです。私達がもしかすると70%を好きにやって良いということと一緒のことです、結果的には。そこから私達素人が初めて工業デザインの資格もない私達がJR九州へ入って、JR九州の工場の人から図面の描き方から色々なことを教えてもらいながら、22年間お手伝いしています。今もずっと22年間。社長は4人目に変わりましたが、でも私達デザイナーはそのままです。普通、デザイナーは社長が変わると変わるんです、経営方針とデザインとは一致していますから。でもJR九州は赤字の苦しい環境なので、そう簡単に方針は変えられないよと言うことから私達はデザイン顧問として今もデザインを担当させてもらっています。なおさらJR九州の側に立たないって言うのが大事なんですね。ついつい企業の側に立つでしょ?

そうなりますね、企業利益を語ろうとします。

 企業利益を語るのは簡単だよね、でもそんなものは商品にならないでしょ。これからは特にそうです。企業はインフラですから、存続以上に利益を出す必要はなく、社員がちゃんとお給料もらえて、出した商品がリーズナブルで多くの皆さんがそれを利用し豊かな生活が出来る。その経済と文化のバランスをいかに保つかというのが能力であって、経済だけ豊かな事を追求するなんて能力が低くて出来ません、難しいことではなくそろばんの世界だから。文化は心の世界だからそろばんはではない。いわば肉体は経済で、心は文化ですから、肉体と心のバランスをとりながら生きていかないと人間も健康では無くなるし人間社会も地球も上手くいかない。経済と文化のバランスが上手く取れるかが全てで、私達のような小さい企業も事務所の経営という経済と地域のボランティアという文化とこれをいかにバランス良く行うかです。それを考えないような建築やデザイン事務所設計事務所は必要がないでしょう、同様に企業と利益だけを追求しているところいっぱいいることは、おかしいことです。本来、デザインや建築は、ものすごく高い次元の経済と文化を理解している人達がやらなくちゃいけない仕事なのに、そうでない人達、趣味でやっている人達が多い。それをどうするかって言うところまで来ています。だからデザイナーを多くの人達が信用していないっていうのは昔散々遊ばれてしまった、大きなお金を使って箱物をいっぱい作られて、何にも役に立っていないっていうことばっかりじゃないですか。政府を批判しますが、それを手伝ったのは建築家であって建築家は、批判をしていません。こんなものを作っちゃいけないとは、言ってない。 逆でしたよね、ものを通じて文化を語ろうとしましたから。

 もっと言えたのに言えなかった、言わなかった、クルマメーカーもそう。デザイナーが反対するべき事がいっぱいあったはずです、建築の街作りも建築家が反対するべき事がいっぱいあったのに。だからこんなふうになっちゃったんだ。サイン看板に対して誰も文句言わなかったから看板だらけになった訳です。看板業界は実に大きな業界ですから、表に出て来ませんが大きな市場ですからこれに本格的にメスを入れる時期でしょう。

むしろ、競争は止まらない。

止めようと思うなら、大きさによって課税すれば良いのです。看板に対して税金をしっかり取れば問題ないですよ、税金が安いから問題。看板やTV広告を抑止することなく、むしろ助長する構造があることです。デザインというのは政治とも絶対関わっています。人間社会と密接な関係があるのに、それを関係がないように生きて行こうとするデザイン教育はおかしいし、総合的に立体的に物事を俯瞰できるそういう人達・子供達を育てない限りは、あくまでもデザインは趣味の延長でしかないのです。

聞き手:青柳新吾 写真:後藤匡人

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